ある昔話です。
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昔々、ある美しい村に、リラという才能あふれる若い女性が住んでいました。リラは、村の中で、一番、歌声が美しいと高く評価されていました。リラも歌うことがとても好きでした。
しかし、リラは、歌を皆の前で披露するのをとても恐れていました。
ココロの奥底では、
「間違えたらどうしよう」
「声が出なかったらどうしよう」
「笑われたらどうしよう」
という不安や怖れを
ずっと持ち続けていたのです。
ある日、リラは、村の賢者のもとを訪れ、
ココロの悩みを打ち明けました。
「本当は歌うことが大好きなのですが
いつも不安で仕方がないのです。
失敗したらどうしようという不安ばかりで
ドキドキしながら歌っている自分が
とても情けなく、イヤなのです。
もっと楽しく歌えばいいのに･･･と
歌う度に、後悔ばかりしています」。
賢者は、穏やかに微笑みながら、
暖かいお茶をリラに差し出し、言いました。
「リラ、君の唄声は本当にステキだよ。
人のココロを惹きつける魅力、
人のココロを癒す力があるんだよ。
誰もが不安や恐れを持つものだけど、
乗り越える勇気が大切なんだよ」。
そう言って、賢者は、リラに
２つの小さな石を見せました。
１つは白い石、もう１つは黒い石でした。
「白い石は、“やってしまった後悔”だ」。
賢者は、白い石を手のひらに乗せ、
リラの目の前に差し出しました。
「この白い石は、
最初は大きく感じるものだが、
時間が経つにつれて、
だんだんと小さくなる。
なぜなら、
“やってしまった後悔”は、
経験となり、学びに変わるからじゃ」。
次に、
賢者は黒い石を左手の手のひらに乗せ、
リラの目の前に差し出し、話を続けました。
「そして、
この黒い石は、“やらなかった後悔”だ。
この石は、
最初は小さく見えるが、
時間が経つにつれて、
どんどん膨らみ大きくなっていく。
なぜなら、
“もしあの時やっていたら…という後悔”は
だんだんと自分を苦しめるものじゃ」。
リラは、それぞれの石をじっと見つめ、
自分の胸の中にある黒い石が、少しずつ
大きくなっていることに気づきました。
彼女は、深呼吸をし、そして
賢者に感謝の言葉を伝えました。
「これからは、不安や恐れを
先に考えることはしません。
今、自分ができる力を出して、
やりたいこと、好きなことを
楽しんでやっていきます」。
ココロのモヤモヤが吹っ切れたリラは
ココロの中の曇りが消え、輝く笑顔で、
村人たちの前で歌を存分に披露しました。
村人たちは、うっとりしながら、
リラの歌声に耳を傾け、歌が終わると
温かい拍手を彼女に送りました。
最初の頃は、少し緊張しましたが
村人の温かい拍手が、次第に彼女に
勇気や希望を与えていきました。
そして、リラは気づいたのです。
”やってしまった後悔”は、
やがて小さくなるけど、
”やらなかった後悔”は、
やがて大きくなる、
そして、自分を苦しめていく･･･。
それ以来、
リラは、自分のココロに芽生える
白い石と黒い石を思い浮かべながら
前に進む勇気を持ち続けたのでした。
こうして、リラは
村人のココロの支えとなり、美しい歌声で
村人に勇気や希望を与え続けたのでした。
おしまい
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