アメリカ留学を経験した会社の新人A君に出会い、アメリカ留学の方法を聞いた。恐怖症を克服し、普通の生活を送っていた私に、次なる欲望が芽生える。アメリカを考えるように。
A君から話を聞いた次の休日、名古屋の三省堂書店に電車で向かう。A君から紹介があった本を手に入れるために。
大学時代に催眠術に関する本を探しに、新宿にある紀伊國屋書店に行ったことを思い出す。探す分野、気持ちは違うけど、当時を懐かしく感じる。今は、萎縮していた当時とは比べものならない明るい気分。
「(あった!)」
A君から聞いていた本が見つかる。「American Two-year colleges」(確かこんな題名だった)
すぐにレジに向かい、どこにも立ち寄らず、まっすぐ電車に乗って帰る。当たり前だが、すべて英語。解らないことばかり…。ショックを受けながらも、辞書を片手に、単語を調べていく。
2週間ほどしたところで、A君とバッタリ会社の通路で出会う。
「あの本、買ったよ。解らないことばかりで…」
「行動力ありますね」
「やってみたいと思いながらも、できなかったんで。でも、この前、A君からどうやってアメリカに行けばいいのかを教えてくれたから、まず動いてみようと・・・」
「この前、言いましたが、入学願書の請求は、行きたい場所を絞ってから、必ず50校以上に請求してくださいね。50校に頼んでも、たぶん30校くらいしか願書を送ってきません。それがアメリカなんで。その30校の中でも、寮があるかないか、学費、TOFLEの点数などによって、5校くらいに絞られるので。とても大事なことですから。何か解らないことがあれば、遠慮なく聞いてください」
そして、それから1年後の1992年1月、名古屋空港からポートランドに向かう飛行機に乗っている。会社は退社。恐怖症を克服して、普通の生活を手に入れたと思いきや、今度は恐怖症当時、できなかったアメリカ行き。ワクワクする。アメリカの地に立つ。ワイオミング州ロックスプリングスのWWCCへ。
アメリカの生活が始まって、もう2ヵ月。恐怖症はもう頭にない。カフェテリアでも普通に食事ができる。日本人とも、アメリカ人とも楽しく食事できる毎日。
イースターにて4,5日の休みがあった。そのとき同じコミュニティカレッジにいた日本人から旅行の誘い。
「次の休みに、デンバー、サンタフェ、ラスベガス、グランドキャニオンなどを車で周遊しますが、予定がなければ、ご一緒に?」
ありがたいお誘い。喜んで受ける!
ロックスプリングスからまずはデンバーに向かう。夕方に到着。有名なイタリアンレストランを予約したとのことで、その店に入る。高級感ある店。明るく、きらびやか。ただ客席は狭く、座っているアメリカ人がはみ出しているような圧迫感がある。恐怖症のときはとても苦手な雰囲気。
3人が席に案内される。
席に座ると、本当に圧迫されるくらい狭い。私はボロネーゼをオーダーする。オーダーを終え、料理が到着するのを待つ。となりの席から、「プーン」と、きついチーズの匂いが。
店内の圧迫感とチーズの匂いが私の気分を悪くする。身体に緊張感が出てきてしまう。
「(ヤバッ! 身体にあのときのように身体に異変が起きそう!)」
「ちょっと目がショボショボするんで、目をつむるね」と目を閉じ、自己催眠術を使い、心を落ち着かせる。かなり久しぶりではあったが。アメリカでは初めて。集中して1,2分。心も身体も落ち着いてくる。
「(よし!)」
そして、運ばれてきたボロネーゼを食べ始める。ちょっとヤバかった!でも、何とかなった!
となりの席のチーズの匂いが鼻に入ってこないように、できるだけ口で息をしながら…。
とっさに身体を落ち着かせることができるとは! すごい!
さらに自信につながる。
次回は「それから…。恐怖症の行方はどうなった?」をお伝えします。