嘔吐恐怖症のせい・・・、大きすぎる代償

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恐怖症によって親友を失う

 
吐くことへの恐怖、人と食事をする恐怖。何とか慣れた仲間と居酒屋へ行くことができるようになったものの、女性とお付き合いできない、食事付きのバイトができない私。恐怖症によって、行動範囲が限定され、普通の生活すら影響が出てしまう・・・。友人との騙し騙しの約束もこれ以上…。

私が、欲しかったもの、手に入れたかったもの、

ごく普通の生活・・・。
『どこでも、誰とでも食事ができる生活』

それだけ。

でも、
どうやって恐怖症を克服できるのか? 
どこの誰が、その方法を知っているのか?
恐怖症を治せる方法が果たしてあるのか?

時間は刻々とすぎていく。

大学2年の4月。
1年間予備校に通い、この春、東京に出てきた親友Kと新宿で再会する約束をします。彼は高校1年からの付き合いで、私にビートルズを教えてくれた友人でもあります。1年以上振りのK君との再会で気持ちもワクワク。

とはいうものの、

恐怖症の私は、彼と会う約束の時間を13:30~17:00に限定。「18:30に別の用事があって遅くても17時過ぎには新宿を出ないと・・・」と事前に伝える。昼ご飯、夕飯の時間を避けるために。

食事を気にすることもないので、安心しながら、ワクワクしながら新宿のアルタ前に向かう。約束の時間、K君と1年以上ぶりに再会。

「元気? 久しぶりやな。行きたいと言っていたW大学に受かってスゴイな」

「茶店に行こうか?」

歩きながら、昔話に花が咲く。

「ここにしよか」と喫茶店に入る。

飲みモノを頼む。僕はアイスティー。飲むだけなら怖くない。
とは言いながらも、トイレの位置はしっかりと確かめる。

「ビートルズ、教えてくれて、ありがとなっ。それから洋楽を聞くようになって・・・。デュラン・デュランとか、ブライアン・アダムスとかも聴くようになって・・・、MTVも観てるよ」

と感謝を伝えながら、高校1年のクラスメイトが今、どこにいるのかなどの話で盛り上がる。
気持ちもリラックスしていて、いつもの通りの自分。

3時過ぎくらいなったところで、K君から驚きの言葉が!

「オレ、昼食べてないから腹減った。時間、5時まで大丈夫だよな。何か食べよか」

その話を聞いて、、、

しかし、身体に異変は起きなかった。

「(今日こそ、大丈夫じゃないか。時間的に軽くしか食べないだろう)」

「よし。行こか」(言ってしまったが本当に大丈夫か)

喫茶店を出て、店を探す。

「ここにしよ」 そこは、一般的なイタリアンレストラン。K君がいきなり店内に入っていく。

もちろん、居酒屋とは違い、店内は静かでキレイ。座っている人も品があり、落ち着いた感じの人ばかり。満席に近い状態。ウェイトレスに席へ案内される。身体には異変が起きない。気持ちも落ち着いている。今日こそ大丈夫。

「(高校2年の中華料理屋のような醜態はもう起きなさそうだ・・・)」

「オレ、ミートソース」と彼が口にする。

ウェイトレスがテーブルに。彼が注文を終え、僕の番になった瞬間!

あぁ、来てしまった! 異変が!

心臓がドッキン、ドッキンと鼓動しはじめる。手足の先がピリピリする。頭から血の気が引き、冷や汗がでる。喉は硬直、口の中がカラカラに渇く。気分が悪くなる・・・。

「(あの中華料理屋のときと同じだ・・・。OKするんじゃなかった・・・)」・・・後悔!

「ごめん! 急に体調が悪くなっちゃって。この店、出よ!」

急いで席を立つ私。ウェイトレスに「すみません」と謝り、K君に「ごめん、外に出よっ」と勝手に出口へ向かう。吐きそうな気分・・・。

歩道に出て、ホッとしたのも束の間、K君から、

「おい! どういうことや! オマエ何で勝手に出てくんや!」

「ごめん・・・。急に気分が悪くなっちゃったから・・・」

「なんや、オマエ! 注文して店出るヤツいる?! もうオマエみたいなヤツとは付き合っとれん! オレ帰るわ!」

そう言い残すと、そそくさと足早に駅の方へ行ってしまった。歩き方も相当怒っているようで、肩が上下に大きく揺れていた。彼は後ろを一切振り向かなかった。

動くことができず、彼の歩く後ろ姿を見ながら、心の中で「(ホントに、ごめん・・・。オレ、恐怖症なんだ。どうにもならないんだよ)」と謝る。

彼の姿が人混みに消えたとき、ゆっくり足を動かし、大学の寮への帰路についた。

「(あぁ、親友を失った・・・。恐怖症のせいだ! 何でいつまで経っても治らんのか! )」

乗り越えられない自分に腹が立つばかり。

「(はやりダメか・・・。せっかく酒を飲んで酔えば、リラックスして楽しめることが判ったのに・・・。やはり普通には食事できない身体なんだ・・・。ダメだな・・・)」

「(あぁ、もう彼とは会えないな。会ってくれたとしても、同じ失敗は許されない。変なプレッシャーが自分にかかって同じ結果になるだろう・・・)」

未来に絶望感を抱きながら、落胆しながら、電車のつり革につかまり、窓ごしにボーッと外の風景をみていた。「(はぁーっ)」ため息ばかり・・・。

でも、酔えば不安や恐怖が引いて、リラックスできることが解っている・・・。それが、せめてもの救いかもしれない・・・。何かヒントになることはないのか?

何とかしないと、このままではヤバい! でも、どうすればいい?

相変わらず、時間だけが刻々と過ぎていく・・・。

次回は、「恐怖症を克服する糸口?」をお話しします。

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