お酒を飲んで酔うと気分が楽になる。居酒屋なら食べる量など誰も気にとめないから、さらに楽になることが解った私。恐怖症改善への何かのヒントになるんじゃないかと感じはじめていた。
しかし、それはあくまで知っている仲間に限定されていた。
同僚から、合コン(他の大学の女性との飲み会)に何度か誘われたが、受けるのが怖い自分がいた。
「ごめん。オレ、そういうの苦手なんだ。女性は苦手なんだ」と、大ウソ(?)をついて、合コンは避けた。正直言うと、もし合コンへ行って身体に異変が起きたらどうしようと恐れたから。
妄想にすぎない話だが・・・。
もし合コンに行って、酔いの力で身体の異変が起きず、楽しい時間を過ごせました、そこに意中の女性がいたとする・・・。だとしても次のアクションに進めないから。何人かでドライブに行こうとしても、二人で会いたくても、吐くことが怖いから、食事できない。僕には越えられないハードル。
寮の先輩が言う、
「この前の合コンで知り合った女性と、明日会うんだ!」
とってもうらやましい!
「いいですね。かわいいですか? どんな感じの人ですか?」
そんなこと聞きながら、自分への情けなさが込み上げてくる。
「(恐怖症にさえ、なってなければ・・・)」。私にはどうすることもできない。
アルバイトも同じ。
同僚の2,3人は、夕方から居酒屋でバイトしていた。
「“まかない食”あるから、夕飯作らんでいい。美味しいし、食費も浮く。期限切れのボトルももらえるし、バイトの女性もかわいい子がいて楽しいぜ。鈴木も居酒屋でバイトしたら? 今もバイト募集してるぜ」
「(嘔吐恐怖症、食事恐怖症のオレにはムリなんだよな・・・。本当はやってみたい・・・)」
あぁ、女性とお付き合いできない・・・、
あぁ、食事がでるところでバイトできない・・・、
あぁ、遠出することもできない・・・。
やっと寮の仲間と居酒屋へ行くまではできるようになっても、まだまだ行動範囲が狭いと痛感・・・。
なので、自分のバイトも選択肢が少ない。
当時、私がやったバイトは、
・塾の講師 18:00~20:00(中学生に数学を教える)、とか
・工場での部品塗装 18:00~21:00
このように食事が付いてないところに限定される。
女性とデートしたり、飲食店でバイトしたり、自由に動ける同僚を見て、うらやましく思うだけだった。
ごく普通の生活・・・。
『どこでも、誰とでも食事ができる生活』
私が、欲しかったもの、手に入れたかったものは、これだけだった。
次回は「恐怖症のせい?大きすぎた代償」についてお話しします。