小学4年のある日の出来事によって、吐くことを恐れるようになる。小学6年生では給食を残さず食べされられたことで、小さな怖さが大きな恐怖になる。人前で食べることを考えるだけで、身体に異変が起きるようになる。
高校2年のとき、友人に誘われた“中華料理店”で、突然、身体に異変が起きてしまった話を前回お伝えしました。やはり、小学6年で発生した身体の異変、4年以上経っても、身体はしっかり覚えていました。もう外食できない身体、人と食事ができない身体に。友人との約束は避け、家でしか、まともに食事ができなくなっていました。
大学入試は、まず共通テスト(旧 共通一次試験)近くの国公立大学で受けます。私は岐阜薬科大学で受験。当時、プレッシャーを感じると、一気に食欲が落ちました。もちろん、嘔吐恐怖症を引きずっているので、余計に食べたくありません。共通一次試験があと4日くらいに迫ると、自宅ですら食べ物が、ほとんど喉を通らなくなってしまいました。受験のプレッシャーによって、すぐにでも吐きそうな気分になっていました。
試験1日目。朝食は小学4年以来、食べていませんので、食べずに出かけます。胃腸薬だけ飲んで。昼は弁当ですが、恐怖症のため、食べられないし、仮に持っていくだけでも私自身にはプレッシャーになるから持っていきません。一日目が終わり、家に帰っても、相変わらずプレッシャーのせいか、食べ物が喉を通りません。
試験2日目。1日目と同じで、朝食抜き(胃腸薬は飲む)。昼も抜きです。でも胃の中が空っぽなので、吐くことへの恐怖がなくなります。これで安心して試験に挑めます。すべての試験が終わり、家に帰ると、さすがにこの5日間、ほとんど食べていないこともあり、ボーッとして、目線も定まりません。身体から魂が抜けてしまったような虚脱感がありました。
私立大学の受験は、私の失態で、宿の手配が遅れてしまい、どこも受験シーズンで満席。空いていたのは高級ホテルくらいでした。やむを得ず、目黒区にある親戚にお願いして、泊めてもらうことに。問題はその家での食事をどうするか? どう避けるか? です。一番悩ましいのが朝食!
食事を避けるために、事前にどういう策を打ったかというと、
試験前日の夜8:00過ぎに、親戚の家に着くようにする。夕飯は駅弁を食べるので…とお断りしておく。試験の昼ご飯は、大学近くの食堂で食べるので弁当は作らなくても大丈夫。試験が終わったら、次の受験勉強に向けて、荷物だけ取りに来て、すぐに実家へ戻る…という作戦。一番の問題は、試験当日の朝食をどう断るか?
目黒の親戚は豆腐屋さんなので、朝は早い。もちろんしっかり朝食をとるはず。
どうやって朝食から逃れるか? 手っ取り早く、「私の試験のリズムがあって、朝を抜いて、空腹状態の方が実力を出せるんです」と予め伝えた。いわゆる素泊まりプランですね。
そして、移動した日の夕飯は作戦通り。「お腹空いてるでしょ?」、「電話でお伝えしたように、新幹線で駅弁食べたのでお腹がいっぱいです」、「あら、そうなの・・・」これで終わり。
試験当日の朝。「朝食はしっかり食べないとダメだよ」と朝食を勧められる。
「すみません。電話でもお伝えしましたが、朝食を食べると調子が出ないんです。空腹の方が実力が出ていますんで…」と、何とか切り抜ける。
「弁当、作っておいたら持っていきなさい」
「大学近くの食堂で食べるので大丈夫です」
「すぐに食べられるから、持っていきなさい」(本当に、ありがたいことなんですが・・・)
「ありがとうございます。持っていきます」
私は、その弁当をどうしたか?
ごめんなさい。駅のホームにあるゴミ箱に。
(食べ物を粗末にして反省ですが、食べ物を持っていることすら怖かったので)
こんなことまでして、大学受験を乗り切りました。
試験以外に恐怖症についても配慮する自分、余計に疲れます・・・。
そして、大学生活に入ります。
高校生活と同じような方法で、恐怖から逃れられるはずだと考えていました。
次回は「大学に入って最初の試練と意外で不思議な感覚」についてお話しします。