ポカポカと暖かい春の陽差しが窓辺に差し込んでいた。窓の外では、花や木々が寒い冬を越え、自分を美しく表現できる春が訪れたことを喜び、楽しんでいた。
その窓辺には、ダイアンという女性が、花や木々とはまったく対照的に、今にも泣きだしそうな表情を浮かべながら座っていた。彼女のココロは、暗闇にすっかり閉ざされ、彼女のカラダは完全に力が抜けていた。
彼女は、自分の夢を追い求める勇気をなくし、夢を追うのはもうやめようとしていた。理想と現実のギャップに悩まされ、これ以上の失敗はしたくないから、夢をあきらめることを誓おうとしていた。
彼女は、1時間ほど前、ポストに届いていた親友からの手紙をふと思い出し、ため息をつきながらも、とりあえず目を通してみた。
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大好きなダイアンへ
もう失敗するのはイヤだと夢をあきらめようとしているなら、もしかすると、それは自分の理想に執着しすぎているかもしれないよ。
理想と現実は違うものよ。
例えどんなに準備を万全にしたとしても、上手くいかないこともよくあるものよ。誰もが、理想の未来を夢見て、前に進むことが大切だと解っていても、逆に、それが邪魔をして、予想していなかった結果になることや後ろ向きになることもあるものよ。
私は以前、「自分の理想通りに」、「今すぐやらなきゃ」と、物事を進めようとしすぎて、失敗してばかりだったよ。でも、その経験こそが、もっと成長するためには必要なことで、夢に向かう旅においては、貴重で次に活かせる経験だったと判ったのよ。
理想を求めるものステキなことだけど、現実には予測できないこともあるものよ。でも、それが生きることを面白くしているし、また後世に伝えていく想いになっていくと思うの。
失敗することは、“ジ・エンド”ではなく、新たな希望のスタートだと思うよ。私の経験上、“失敗”というものはなく、『こうしたら上手くいかない』という学びや気づきがあるだけだよ。
なので、ダイアン、もう一度、よく考えてほしいの。
夢を諦めないでほしいのよ。夢に向かって、これからも、あなたらしく前に進む勇気を持ってほしいのよ。
『失敗ではなく、未来に活かせる貴重な経験だった』、そう受け止めてみてはどうかしら? そうすることで、あなたのココロの中に新たな希望がきっと芽生えてくると思うよ。
私たちの経験や想いを、同じように苦しみ、悩む人たちに伝え、そのような方に少しでも勇気や励ましを与えられるといいよね。
尊敬するダイアンへ カレンより
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ダイアンの目からは、いつの間のか、溢れんばかりの涙がこぼれ落ちていた。手紙を手にしながら、唇や手、カラダがプルプルと震えていた。その震えは、恐れや怯えではなかった。
ダイアンのココロの中には、勇気がフツフツと湧き出てきて、やる気もどんどん湧き上がってきた。
- 『失敗は終わりではなく、新たな始まり』
- 『失敗というものは存在せず、気づきや学び』
親友カレンからの手紙によって、「そうか!もう一度やってみよう!」と勇気と希望が込み上げてきた。
彼女は笑顔を取り戻し、窓辺からスーッと力強く立ち上がると、窓の外で清々しく輝く春の景色に笑顔で応え、自分の夢に向かって歩きはじめる決心をしたのだった。
今回は以上です。